交通事故案件では,問題点は大きく分けて「責任」の問題と「損害」の問題に分かれます。
「責任」の問題とは,その事故について,どちらにどれくらいの責任(過失)があるか,という問題です。
通常は,「100(10):0」とか,「5:5」「6:4」などといった割合(比)で表します。
1 事故状況
警察が事故直後に行った検証(実況見分)の内容が基本の資料になります。
「実況見分調書」に添付された「見取図」に事故状況が図示されているのが通常です。
この実況見分の内容(見取図)がある程度正確であれば,これをもとにして考えていけばよいということになります。
しかし,中には,実況見分の内容(見取図)が不正確であったり間違っているというケースがあります。
その場合には,他の材料から真実の事故状況を明らかにしていかなければなりません。例えば,ドライブレコーダーの映像や目撃者の証言などによって,警察の実況見分と事故状況が違うということが明らかになる場合には,「真実の事故状況図」を作って,それをもとに判断していくということになります。
2 過失割合の検討方法
別冊「判例タイムズ38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準」(東京地裁民事交通訴訟研究会編)という本があります。
これは,事故の当事車両の種類,道路の形状や衝突のパターンごとに338種類の図分けて,基本的な過失割合を解説するものです。
たとえば,信号のない交差点での直進車対右折車の衝突であれば,「直進車:右折車」の過失割合は基本的に「20:80」であるという風に解説されています。
ただし,それぞれの事故にはそのケース特有の事情がありますから,この基本割合に加えて,修正要素があるかどうかを検討して最終的な過失割合を決める,という検討の仕方が一般的です。
修正要素とは,速度違反があったかどうか,著しい過失などがなかったかどうか,合図(ウインカー点灯)の有無などです。
過失割合について争われるときは,この「修正要素」があるかどうかをめぐって争いになることが多いです。
3 訴訟活動
① まず,上記1のとおり,事故状況が事実に基づくものであることが第一です。この点に問題がある場合は,証拠(ドライブレコーダー映像,目撃者の陳述書,本人の陳述書)の提出や,証人(目撃者等)尋問,本人(運転者)の尋問などによって,真実を明らかにするように活動します。
場合によっては,交通工学鑑定を利用する場合もあります。交通工学鑑定というのは,たとえばスリップ痕のような事故の痕跡から,事故状況(車両の速度や位置関係など)を分析する専門家に依頼して行うものです。
② そのうえで,交通法規(道路交通法など)に基づいて,裁判所に事故の責任(過失)割合を正しく評価してもらうよう,説得力のある主張を心がけて行います。
何となく「動いているもの同士であれば過失相殺があって当然」という漠然とした感じではなく,その事故の被害者の立場において本当に事故を予知して回避することができたかという点を具体的に検討して,必要な主張を行います。